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和名 |
ミナミバンドウイルカ
ミナミハンドウイルカ |
学名 |
Tursiops aduncus |
英名 |
Indo-Pacific Bottlenose Dolphin |
ミナミバンドウイルカまたはミナミハンドウイルカ(南半道海豚)と呼ばれています。水族館では前者、大学などの研究機関では後者で呼ばれることが多いようです。 |
分類 |
鯨偶蹄目 歯鯨亜目 マイルカ科 バンドウイルカ属 |
最近イルカやクジラはラクダやウシ特にカバに近い仲間だということが解ってきました。
本種は水族館などで見ることのできるバンドウイルカと同じ種類だと考えられていましたが、2000年に別の種類であるとされました。 |
住んでいる場所 |
インド洋から西部太平洋に分布し、ときおり御蔵島地先から周辺の島々へなど移動することもありますが、沿岸域に定住する傾向が強いようです。それに対しバンドウイルカは沖合を長距離移動します。 |
からだの特徴 |
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バンドウイルカと比較するとやや小型で、成長すると体長2.7m程。これに対しバンドウイルカは大きなもので3.8m程になります。
また、バンドウイルカと比べると吻(くちばしのようにみえる部分)が細長く、後縁の湾曲が小さく背びれの形が三角型にに近い傾向があるようです。
成長すると、ミナミバンドウイルカはおなかにまだら模様が現れます。 |
鳴音(鳴き声) |
ミナミバンドウイルカは様々な鳴き声(鳴音)を出します。
「カチカチ・・・」「ジー」と聞こえる鳴音はクリックスと呼ばれ、おでこのに出っ張った部分から海中に出され、ものに当たって跳ね返ってきた音を下あごで拾い解析することによって、そのものがどんなものであるか?どのぐらいの距離にあるのか?が解ると言われています。これをエコロケーションといいます。クリックスはこちら
「ピュイー」と口笛のように聞こえる鳴音はホイッスルと呼ばれ、イルカ同士のコミュニケーションに使われていると考えられています。ホイッスルはこちら |
皮膚 |
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ドルフィンスイムではイルカに触ることはできませんが、水族館時代の経験も交え少し紹介します。
生まれたばかりのときは吻の付け根に若干毛が残っていることがありますが、それが抜けた後のミナミバンドウイルカには全く毛はありません。ときどきその毛穴が炎症を起こすことがあります。それって「ニキビ」?
肌はとても滑らかで、かなり弾力があります。歳をとると若干肌の衰えがめだってはきますが・・・
皮膚の新陳代謝による垢のようなものが肌についていることがあり、飼育下ではそれをこすりとってあげると、とてもきもちよさそうなそぶり?をみせることがあります。
皮膚の傷は、完治しても長い間白く残り、個体を見分ける目印にもなります。 |
泳ぎ |
近い種類と考えられているバンドウイルカで、泳ぐスピードは時速30km程、潜水時間は数分程、深さは500m以上潜るとのことです。 |
食べ物 |
バンドウイルカと区別されていない頃のデーターですが、様々な種類の魚類(人が普通に食べるものも食べないものも)、イカ、タコ、エビなどを食べるようです。 |
目 (視覚) |
視力は人に換算すると0.1程。ただし暗い海中でものを見る能力は優れているようです。
また、前方と斜め後方が良く見えているとのことで、真横じゃなくてイルカの後ろでも視線が合っているのかも?です。
色に関しては、明るい色・暗い色は判るようですが、青・赤・黄色といった色を判別できるかどうかはまだ解っていないそうです。 |
成長 |
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妊娠期間は1年ほど、約1mの赤ちゃんが生まれます。
生まれたばかりのときは、おなかの中にいたなごりである胎児線が残ります。
生まれてから1年半年ほどは、おかあさんに母乳をもらいながら成長します。(飼育下では6歳までおかあさんの乳首あたりをつついていた個体がいましたが・・・)
3歳になるくらいまでは、おかあさんやその代理を務めるメス(ベビーシッター)のごく近くで過ごし、それらの個体が起こす水流によって泳ぎを助けてもらいながら成長するようです。
メスは6歳ぐらいで、オスは10歳ぐらいで成熟し、寿命は30~40年ほどだそうです。
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執筆:元水族館学芸員 上田修久 |
○参考文献 |
加藤暁音 他 「いるかいないか」 御蔵島観光協会 2010年 |
村山司・中原史生・森恭一 編著 「イルカ・クジラ学」 東海大学出版会 2002年 |
村山司 編著 「鯨類学」 東海大学出版会 2008年 |
村山司 「イルカ」 中公新書 2009年 |
村山司・森阪匡通 編著 「ケトスの知恵」東海大学出版会 2012年 |